沢登りなんて、するはずじゃなかった
2020年6月17日。
私は、人生の半分損してたということを、知ってしまいました。
山に登り始め、縦走、テント泊、冬山とやっていくうちに、登山教室の門を叩き、ロープを結んでバリエーションルートへと足を踏み入れたものの、沢登りだけは絶対にしないと思っていました。
とにかく危険だし、蚊も叩けないくらいに虫がダメな私には不向きすぎると。
「外道クライマー」を読んで、沢ヤってこんなにクレイジーなんだ!と衝撃を受け、自分からは冥王星よりも遠い世界だと思っていたのです。
しかしそんな私にささやく人がいました。
「沢をやらないなんて、人生の半分損してるよ。」
んなわけあるかい、と思っていたのが、はるか遠い昔のようです・・・。
野湯のわく沢 毒水沢
そんな私がまんまと口車に乗せられ、やってきました草津温泉。
今回は業務視察に同行させてもらうという形で、やってきました。
毒水沢という物騒な名前の沢は、さすがは草津の温泉地、温泉がわいており、野湯マニアにも知られているとのこと。
その沢を遡行しつつ、温泉も探しちゃおう!という企画のために、現地を確認する視察に同行させてもらうことになりました。
草津温泉に前泊という大名旅行で、当然へべれけです。
今回のメンバーは男性1名、女性2名ですが、全員同じ部屋で宿泊です。
もしかしたら、いわゆる「普通」とか「世間の常識」からかけ離れていると思われるかもしれませんが、普通とか常識なんて、人の都合や時代でいくらでも変わるんですよね。
もちろん、山や沢をやる人全てが、こういう感覚というわけではないと思いますが。
今回は連れて行ってもらうわけなので、せめてお礼をと思って持っていたトリュフ塩をプレゼントしたところ、その素晴らしい香りに、
M永さん「うわー!めっちゃいい匂い!これは家族には食べさせんとこ!」
家族にも食べさせたいと言うかと思った、私の予測が甘かった。
私の身近な人、だいたいどっか変。
靴のまま水に入る新鮮さ
駐車場は、ここがよいかと思います。
夜間はトイレすらも閉鎖だったり、時期によっては有料だったりするようなので、最新情報をチェックしていったほうがよさそうです。
しばし車道から遊歩道を歩き、やがて遊歩道は沢と交わります。
木の橋がかかっている場所から入渓しましたが、そこには火山ガスにより立ち入り禁止とかなんとかの立札が・・・。
クライアントを連れていく企画で、こういった立札を無視して立ち入るわけにも行くまいと、遡行はあきらめ、そこから沢を下降することにしました。
一般登山上で橋がかかっている場所はよくありますが、橋や登山道以外の場所は歩いたり立ち入ったりする場所ではなく、まるで見えないバリアでもあるかのように、これまでは単なる景色として存在していました。
それを、靴のままじゃぶじゃぶと沢に入っていく。
沢靴だから当たり前なのに、とても衝撃的でした。
今まで、あんなに濡れないようにしていたのって、何だったんだろう。
こうして、普通とか常識とかがぶっこわれていくのかもしれません。
温泉成分の影響で独特の色合いの川床が、よりいっそう非日常感を盛り上げます。
何もかもが初めてで、楽しくて、私は今まで何をしてたんだろう?人生半分損してたって本当だな、あー痛恨、でも今からでもやれてよかった・・・と、目からウロコがぼろぼろ落ちるとともに、私はいよいよおかしくなるのです。
新しく開いたこの扉は、果たして天国に続くのか地獄につながっているのか、それはわかりません。
足湯はできた
入渓後、温泉と呼べそうな場所を探しつつ沢を下降していきます。
沢の色は、なんだか温泉色。
しかしそう都合よく温泉があることはなく、時に懸垂下降も交えつつ、野湯を求めて進みます。
懸垂下降を覚えたての当時、思いっきり振られてしまい、M永さんをバッシャーンと水に叩き込むことになったのも、いい思い出です。
もう時効でしょう。
トリュフ塩プレゼントしたから許して。
時にロープを出しつつ、沢へと分け入ります。
もし沢登りのことを何も知らない状態で、沢沿いに上がってきて、こんな滝にぶち当たったらどうしますか?
知恵と技術と経験でどうにかする、それが沢登りです。
ま、この時私はなすがままに突っ立ってるだけでしたけど。
普通に登山道を歩いているだけだったら絶対に見られない景色、できない経験。
それまでは、山と高原地図の赤い線をたどるだけだったのが、地形図の等高線を見ながら一杯飲れるようになってしまう、そんな変態への変態(メタモルフォーゼ)のトリガーが引かれてしまいました。
温泉は足湯程度のものを見つけて終了しましたが、2年後に遡行を果たし、温泉につかってフーッてする記録はいずれ。
軌跡
YAMAPの記録はこちらから。
一般的な毒水沢の遡行ルートではありませんので、草津白根山へ抜けたい方には参考になりません。
改めて、沢登りは大変危険です。
ご自身の判断と責任において、沢登りに手ならぬ足を染めてください。
信頼できる人から技術を教わったり同行してもらう等、ご利用は計画的に。
温泉探し ~毒水沢~ / 里美さんの活動データ | YAMAP / ヤマップ