雪の五龍で雪洞とイグルーと熱燗

遠見尾根は雪洞泊のメッカ

残雪期の五竜岳遠見尾根は、雪洞泊やイグルー泊にピッタリです。
どのぐらいピッタリかと言うと、年中行事になるくらいピッタリです。

目指すはエイブル白馬五竜スキー場。
いつも車はここに停めますが、近隣に駐車場はたくさんあります。
スキーシーズン真っ盛りの週末は、少し遠い場所に停めることになるでしょう。

ここからリフトやテレキャビンを乗り継いで登山口に行き、そこから3時間前後歩いたあたりに幕営適地が豊富にあります。
尾根が広く開けていて、場所は選びたい放題です。
テント泊をする人が多いようで、あちこちに雪でブロックが積まれています。

待ち合わせを一週間間違えた

初めて雪の五龍にやってきたのは、2021年3月のこと。
五龍そのものが初めてだったと思います。
そして訓練ではない雪洞泊も、初めてでした。

知人と約束していたのですが、待ち合わせ時間になっても現れません。
おかしいな、何かあったのかな、とは思ったものの、連絡も取れないため、とりあえず一人でも行くことにしました。
結論、私が待ち合わせを一週間間違えてたんですけどね。

登山口までは、スキーヤーやスノーボーダーと一緒に、リフトなどを乗り継ぎます。
チケット売り場はスキーヤー向けの一日リフト券などを販売しており、登山者の往復ポッキリ券は「とおみ駅」の改札へ直行して買います。
おっと、「ポッキリ」だなんて縁起でもない、骨折しちゃう。
ちなみにクレジットカードも使えました。

周囲はキラキラのスキーウェアに身を包んだ人たちであふれ、なんかデカい荷物を背負ったソロの私は浮いているような気がして、いや、実際浮いていたかもしれませんが、妙に心細いような、なんとも居心地が悪かったことを覚えています。
それと同時に、バックアップのテントも持たず単身で雪の五龍に向かい、雪を掘って一夜を生き延びるんだ!というワクワク感もありました。

あの有名な武田菱が!
これがどんどん近くなってきて、鹿島槍と一緒にドーン!!!ってなるのが圧巻です。

鹿島槍の出現は登山口から3時間ほどでしょうか。
絶景を見ながらアップダウンを繰り返すうちに、幕営によさそうな広い稜線に出ます。

お好みの場所に雪洞を掘り始めます。
雪上訓練での雪洞泊はやりましたが、訓練ではなく、しかも北アルプスでソロというのは初めてです。
それなりに納得できる寝床ができるまでには、約2時間かかりました。
寝るだけのスペースを作るなら、1時間もかからないでしょう。
ちなみに使っているのは、BCAのショベルです。軽くて丈夫。
色々調べた結果で購入したものですが、使い心地に大変満足しています。
ショベルはお好みでいいと思いますが、ピッケル一体型のだけはやめておけ!!!
雪洞を掘るうちに、シェルがズタボロになります。

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寝床が出来たら、熱燗です。
最高としか言えないですね、ホント。
酔っぱらってこぼしても平気だし、水が欲しければ壁を削って溶かせばいいのが、またラク。

雪洞は雪が光を反射してくれるので、小さなキャンドルでも、とても明るく過ごせます。
外は吹雪いてきたようですが、雪洞内は静寂そのものであたたかくて快適でしかなく、ひとりで殿様気分満喫です。
なんなら外の吹雪を眺めながら、ぬくぬくと熱燗を楽しめました。
しかも雪訓で雪洞を掘った時と違って、外気温が低いおかげか、天井から水がぽたぽたすることもなくて最高でした。

↓翌週は、二人で二人分の雪洞をきっちり掘りました。

入り口から中をのぞくと、こんな感じ。

住めそうじゃないですか?

イグルーって、どうなの?

雪洞泊が大変快適気に入ったため、仲間内で雪洞泊を重ねるうちに、

「イグルーって快適そうだよね」

となりました。
というわけで、皆それぞれスノーソーを準備してのイグルー建設工事竣工となるわけです。
ちなみに雪洞を掘る場合でも、積雪の中には氷の層もあるため、スノーソーがあると重宝します。

私が選んだスノーソーは、モチヅキのスノーソーです。
なんでも、硬いカッチカチの雪を切る時に、他のものと比べて2倍切れるとか、南極観測隊もみんなこれとか、冬のデナリで見かけるスノーソーの8割がこれとか、しかも赤い鞘がかっこいい。
金物加工技術の町、燕三条のノコギリ職人の技術から生まれた逸品です。
スコップを力いっぱい蹴りこんでも切れない雪が、スッパスパ切れます。

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ブロックを切り出して、積み上げていくところから工事が始まります。

ブロックを積む時に、早くドーム状にしたくて前傾させすぎても崩れるし、前傾させなすぎても屋根を作れないし、ここは内と外から声掛けしつつ、ブロックを積んでいきたいところです。

結構いい感じに出来上がりました!
隙間だらけのように見えても、全然問題ありません。

内側から見たイグルー。
床をフラットにするのもなかなか大変でしたが、雪洞よりも天井の高さを確保できるので、居住性が非常に良いです。

夜ともなれば、遠見尾根にステキな間接照明が出現。
明かりは人を、ホッとさせますね。

「イグルー、めっちゃええやん!!!」
となった我々は、五龍の遠見尾根でイグルー建築をすることが年中行事となりました。
その年ごとに、行けるメンバーで楽しんでいます。

天気がいい雪山は、とにかく紫外線が強烈です。
耳の皮が耳の形にカパッと取れたことがありました。
どうぞ皆さま、お気を付けください。

イグルーは最高の宴会場

ウィスキーをガラス瓶のままでで持ってくるという愚行。
鹿島槍を背景に、太陽の光を浴びてきらめくボトルが美しい。
持参した人曰く、「なめられちゃ、いけねぇんで」

ウィスキーの水割りならぬ、雪割。
雪ってきれいに見えても、実は結構汚かったりするんですが、まあお祈りすれば大丈夫じゃないでしょうか。

クレイジーマンと鹿島槍。
彼のザックは常人の致死量を超えた密度でパッキングされており、そのフィジカルとメンタルの強靭さは数々の伝説を生みだしました。

熱燗マジ最高。
この酒たんぽとチタンのおちょこは、おうちでも使うことがあります。
軽くて割れなくて使い勝手がよく、その時の気分によって九谷焼の酒器と使い分けています。

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いつの日も、乾杯は最高に楽しい。
今日も思い出は残置かな!

天気は快晴で、早々にイグルー外での宴会スタート。

行きもしない進路を指さしているのでしょうか。

あれ?
リゾートに来たんだっけ?

天気が穏やかすぎて、夜が更けても外でお遊びが止まりません。
ウイスキーがお好きでしょ?

月が明るい夜とiPhoneのすごさよ。

浮かれすぎて組体操。
しかし酔っぱらっているので崩れ扇。

夜明けがまぶしい朝。
五龍の山頂に向かうか、二日酔い気味のメンバー達は物憂げに話し合います。

「どう行くかじゃない、いかに行かないかだ」

という名言に心底納得して、さっさと下山してカレーを飲んで帰りました。

テント泊→雪洞泊→イグルー泊→野ざらし泊

雪山で泊まる方法も、テントから始めてあれこれ試しつつ、シュラフのみで野ざらしで泊まることもやってみました。
真冬にそれほど好天に恵まれることはないでしょうが、残雪期の風もおだやかな日ならば、天然プラネタリウムを眺めながら寝ることも可能です。
2時間かけて作ったイグルーの外で寝るというのも、オツなものです。

念のために申し上げておきますが、つまらないことを承知で申し上げますが、雪山は十分な準備と訓練を必要とすることをご承知おきください。