伊藤新道とワリモ沢と野湯

※この記事はプロモーションを含みます。

1日目 七倉~湯俣

今年も来ました、伊藤新道(2024/08/10~14)。
今回のメンバーは、沢登り未経験ながら心身ともにタフな青年Tと、ひょうきん担当おじさんNとの、3人パーティーです。
この二人は、一回り違いの辰年生まれで大変仲が良く、絶対付き合ってます。

ハーネスとギアがザックに入らないので、最初から着けていくの図

今年も変わらず咲いていました、多分フジアザミ。
一年なんてあっという間だなとか、去年の思い出がよみがえったりとか、特別な思い入れのある花はいくつかありますが、これはその一つです。

去年と同じく高瀬ダムから湯俣晴嵐荘まで、コースタイムで2時間50分のほぼ水平移動から、今回の行程が始まります。
七倉山荘から高瀬ダムまではタクシー利用が一般的ですが、今年は大規模な落石により、途中の一部区間約1.4kmが徒歩での移動となっていました。

タバコ休憩の二人を背後から

酒とつまみで重いザックを背負い、やってきました湯俣。
去年は工事中だった湯俣山荘が、立派に完成しています。
ここも泊まってみたい気持ちは一応ありますが、晴嵐荘が好きすぎて、泊まる機会がある気がしません。

なんと!喫茶では儘にのおやきが食べられるようです。
「儘に」はかつて安曇野市にありましたが、現在は大町市に移転しており、フランス料理のシェフが自身の故郷のおやきを新しいスタイルで提供しています。
TV(遠くへ行きたい)で知ってから何度か行きましたが、車の中がいい匂いで満たされて幸せになれます。

晴嵐荘に着いたら、まずはビールでしょう。
それ以外に大切なことってありますか?
とりあえずテントの受付を済ませて一杯、くぅ~ってやりましたら、T青年が「膵臓がめくれる」と言っていました。
膵臓って、めくれるんですね。知りませんでした。

初日のメニューは、この日のために松本で人気の精肉店で仕入れた和牛の焼肉です。

「これまで食べてた牛肉って、実はルナサンダルの底だったのでは」

という説も浮上しましたが、100g298円のジンギスカンが一番おいしかったので、次回からは安上がりに済ませることにします。

とはいえさすがの和牛、美味しそうな画ヂカラがすごい。

のどの渇きと腹ペコを癒したら、寝床の設営です。
意外にもスペースはゆったりと確保でき、ゴージュタープ2張りとG-Light2張りの、なかなかに豪華でガラの悪そうな雰囲気です。
ちなみに奥のゴージュタープはハンモック泊用です。

青年オリジナルブレンド柿ピーの配給。
柿ピーを配る際にも、きちんと小芝居をからめます。

「あーおじょうちゃん、これは外れだねー。ピーナッツがあんまり出てこないねー。残念だったね、また来てねー。」
「おっ、お兄さん、当たりだねー。アーモンドがいっぱい入ったねー。」

当たりの柿ピーを引き当てた様子

ヤブ漕ぎをしないとお酒にたどり着けないという小芝居も。

テント場はとにかくありんこが多く、シェラカップの中を縦横無尽に闊歩しやがります。
仕方ないな、今回だけだぞと、夕食を分け合いながら、ついでに遊んでもらいました。
特にジンギスカンのたれがお気に入りのようです。

2日目 湯俣~ワリモ沢

朝の晴嵐荘ドリンク売り場にて。

「もう飲み物買えます?」
「大丈夫ですよー」
「じゃあ、黒ラベルの350缶を2本」
「そっちかい!ポカリとかかと思ったわ!」

既に顔なじみになった小屋のご主人から、ツッコミが入ります。
出発前に、今夜と明日の夜の分のビールを仕入れなきゃなりませんからね。

伊藤新道の入り口から。
去年初めて見た時は、心が躍ったものですが、いたって冷静なT青年。

湯俣ブルーは健在です。
今日のところは水量も少なく、快適に遡行できそう。

曲げわっぱでご飯を食す。
彼らの行動食は、前日に炊いたご飯をチャーハンやのり弁にして、曲げわっぱに詰めてお弁当にしたもの。

既にベテラン沢ヤの風格が漂う姿は文祥のよう

歩き始めから3時間半程度と、ほぼコースタイム通りで、ワリモ沢出合に到着。
なお増水や落石による損傷のため、第3吊り橋と第5吊り橋は通行不能になっていました。
ライブカメラで第1吊り橋の様子が見られる他、湯俣山荘でコース内の最新状況を確認できますので、事前に確認したほうがよいでしょう。

2日目の宿泊地はワリモ沢の中です。
幕営地に着いたら真っ先にしなければならないこと、それはビールを冷やすこと。
話はそれからだ。

ランチは素麺、薬味を刻みます。

Nおじさんは包丁持参でしたが、私はヴィクトリノックスのトマト&テーブルナイフを愛用しています。
一般的な包丁が100g以上あるのに対し、たったの28gという圧倒的な軽さと、刃先が丸いため持ち運びも安心、そしてトマトもつぶれない鮮やかな切れ味、何よりお手頃価格が魅力的。
魚の腹を裂くときは別のナイフですが、野菜を切る時はこれがお気に入りです。

ビクトリノックス ナイフ VICTORINOX 公式 トマト&テーブルナイフ ブレード11cm

沢の冷たい水で素麺を冷やします。
素麺というものがこの世にあるということを知ってはいましたが、こんなにも美味しいとは思いませんでした。

ランチでお腹が落ち着いたら、次は土木工事と木こりの作業に取り掛かります。
高台の平らな場所に幕営するために、ザレた斜面にフィックスロープを設置。
これだけの高さがあれば、増水で流される心配はほぼないでしょう。
寝ている間に流されて死ぬとか、絶対ヤダ。

幕営はたいてい、タープとハンモックです。
ハンモックなら、地面が斜めだろうが岩だらけだろうが、問題なく寝られます。
笹ヤブを開いたあとの切り口で、テントに穴をあける心配もありません。
何より、沢音を聞きながら森の中でゆらゆらして、空を見上げた時の気持ちよさと言ったら、なんか「勝ったな」という勝利者感に浸れます。
ちなみに眠る時は、地面に寝る時と同様に、スリーピングマットを敷いて寝ないと寒いです。

こんなにコンパクトで、たったの305gという軽さ。

以前は他社のハンモックを使っていましたが、たった数回使っただけで裂けてしまい、尻から地面に落ちました。
同じ経験をした人が、もっと耐久性の高いハンモックは世にないのか、ないなら自分で作ろう!と思いとともに、KAMMOKはアメリカで誕生したのです。
カラーバリエーションは8色あるようです。
もう少し重くて丈夫なルーダブルや、もっと軽いULもありますが、総合的なバランスで考えるとルーシングルが一番おすすめだと思います。
お値段もお手頃で、幕営手段のひとつとして良いのはもちろん、なんたってコンパクトですから、キャンプで使ったりクライミングの岩場で休憩場所として設営したり、お庭でゆらゆらしたり、楽しみ方は自由自在!

ハンモックにはストラップなどの付属品はありませんので、スリングが別途必要です。
ウーピースリングという、自在に長さを調節できるスリングがあると設営のラクさが段違い!
Cocoonの、ストラップとスリングがセットになったものを使っていますが、同じものは今手に入らないかもしれません。

似たような商品が色々ありますので、参考までにリンクを貼っておきます。

寝床を作ったら燃料の確保です。
去年と同じ場所にある倒木から切り出したものと、拾った小枝を太さ別に分けました。
丁寧な仕事と、刃を替えたばかりのゼットソーが光ります。

作業で汗をかいた後は、水浴びの時間です。
時間はたっぷりありますからね。
冷たくて5秒と浸かっていられないのに、やっぱりこの青年は強い。
そこは風呂なのか?

そして焚火と宴会の時間。
これがなければ、沢に来る意味ってありますか?
すみません、言いすぎました。

Nおじさんはお料理も得意

本当は4人で来るはずでした。
今日、来られなかった仲間のために・・・。

あ、生きてますよ。
骨折で入院して、まな板の上の黄色になってるだけです。

黄色がテーマカラーの仲間のために

沢の夜はいつも、最高に楽しい。
たねほおずきのやさしい灯りが、夜の沢に私たちの居場所を作ってくれます。
控え目でかわいい、ヤマハハコの咲くワリモ沢。
チチカカ湖と言って、Nおじさんを混乱させてやりました。

ヘッデンは断然ビンディ!
軽い、コンパクト、明るさも十分、ずっと首から下げていても気になりませんので、アクセサリーとしてもどうぞ。
T青年も色違いのビンディを装備していました。

3日目 ワリモ沢~野湯探訪

夕立もなく、さわやかな朝を迎えた私たちは、ワリモ沢の上部を探りに行くことにしました。
事前に情報収集をしていなかったので、地形図から見てゆるやかそうな場所までだけ行ってみることにします。

これが実にきれいな渓相で、遡行し始めて間もなく、とんでもなく美しい場所が現れました。
高さがあって水量少なめの滝を背後に抱え、澄み切った水で満たされた流れ!
あの滝、冬になったらすごくいい氷瀑になりそう。

きれいさのレベルが違いすぎます。
限りなく透明に近いブルーって、こういうこと?

これは泳がずにはいられません。

そして水遊びが止まらない。
こんなにきれいな沢なのに、なぜ今までノーマークだったんだろう?
これでイワナがいたら最高なんだけどなぁ。

滝行で禊です。
Nおじさんは、90%の懺悔と10%の後悔でできているとか、いないとか。

やっぱこの青年強いわ。
微動だにしないでやんの。

硫黄が含まれていない沢は生命の気配も濃く、羽化したてのキベリタテハに出会いました。
小さくて無力な幼虫が、よくぞここまで生き残ったものだと思うと、胸が熱くなります。

別の場所では、クモの巣にかかってもがく蝶にも出会いました。
しかし肝心のクモがいなかったので、無駄に死なせるよりはと、逃がしてあげました。
元気で生きろよ、とひらひら飛び去る蝶を見送った私の背後から、

「どうもありがチョウ」

Nおじさんがすげぇのぶっこんできやがりまして、膝から崩れ落ちました。
渡渉している時に言われたら、流されとるわ。

ワリモ沢は入口だけ偵察して、滝の巻きはやめておくこととし、湯俣川本流へ戻って野湯を探しに行きます。
ワリモ沢の透明感とは違った、ミルキーな湯俣ブルーもよきかな。

野湯は、伊藤新道の沢パートが終わる第5吊り橋よりさらに上流側にあるようです。
思い付きで探しに行ってみましたが、右岸は切り立った崖、左岸はガレガレで不安定なため、あの辺にあるんだろうなぁと眺めるだけで、ワリモニュータウンに戻りました。
もう少し下流側で渡渉すべきだったか?

昨夜はエバニューのFPマット1枚で寝たら寒かったので、横着しないでエアマットも使ったら、劇的にあたたかかったです。
前回の沢でなのか、ネオエアーウーバーライトに10円サイズの穴が開いてしまったため、リペアキットで補修してきました。
補修で済むのかあやしいぐらいに大きな穴でしたが、今同じものを買うと38,500円もするらしく、軽く吐血しました。
しかし補修がうまくいったようで、問題なく使用できました。

サーマレストの修理は、このリペアキットで。
冬用のマットもつぎはぎだらけになっていますが、使用には全く問題ありません。
既に4つほどリピート購入しており、自宅に必ず常備しています。

先日とあるアウトドアショップで消耗品を仕入れていた際に、ついでにこれも売ってたらラクだなと思って店員に聞いたら、取り扱いはありませんでした。
それはいいんですけど、

「リペアキットで補修しても、家庭ではうまくいかないんですよねー。僕なんかは、自転車のパンク修理キットで応急処置しますね、ずっとは使えないんですけど、一時しのぎにはなりますよ」

とかいい加減なことを言っていました。
あてにならないなー。

4日目 晴嵐荘へ

快適ワリモニュータウンを後にして、最後の泊地となる晴嵐荘へ下る4日目。
朝食後のそば茶でまったりしてから、ワリモ沢を出ました。
Nおじさんがワリモ沢の出口あたりで「ババ平を探してきます」とか言っていたので、

私「出口の方にあったりしない?」
N「大丈夫ですよ、ちゃんと足を置くならココ!って場所にやっときましたから」

冗談さておき、ブツは埋めるか持ち帰るかしましょう。
紙はもちろん持ち帰りです。

壊れた第3吊り橋。
写真ではほぼ見えませんが、向かって左側の壁に正一さんが赤字で書いた、「引き返す勇気を 雨天の時」との言葉があります。
時間と湯俣の流れに、いつかは流されて消え去ってしまうことでしょう。
去年はここで吊り橋の整備をしている圭さんに会いました。
笑顔で仲間たちと作業をしていたのに、たった1年で2つも吊り橋がやられてしまうとは残念です。
父が書いた言葉と息子が掛け直した橋、それぞれに熱い思いを胸に生きていたことも、いずれは歴史と自然の中に飲み込まれてしまう、無常なり。

緊張感のあるへつりに見えるようで、実はとてもイージー。

湯俣川を下りつつ、話は晴嵐荘の朝食に及び、

私「あの小屋の朝食、すごく美味しいんですよ。今まで食べた山小屋の中で一番美味しい。」
T「食べた山小屋・・・柱がクリスピーとかですか」
私「そんなツッコミ求めてないのよ!!!」

ガンダム岩の下部は、膝ぐらいまでしか水がありませんでしたが、深いから泳いで突破するゴッコをしています。

本当はこんなに浅い。

時間は有り余るほどあるので、帰り道は温泉工事でちょうどよい湯加減の野湯を作成して遊びます。

水俣川の方にイワナがいないか、念のためちょっと探ってみる。
釣れなかったら、お前を刺身にして食うぞと言われ、プレッシャーの中で竿を出すNおじさん。
でも食べたらバラムツみたいにアブラが多すぎて、翌日下痢するんじゃないかと辛らつなT青年。

酒の種類が豊富な晴嵐荘。
初日のテント受付の時にご主人が言っていた、

「美味しい日本酒を用意しておきますよ」

にルンルンで小屋に入るワタクシ。
まずはビールで乾杯しつつ、ご主人とワリモ沢にイワナを放流する計画がどうのとか、野湯のルート状況のお話などに花を咲かせました。
下界に降りたら総理が変わってたりして、と冗談で笑っていたのに、下山したら本当に岸田総理退陣のニュースが出てたのは驚きです。

りんごのケーキのブリュレ風とかなんとかが、スコッチと一緒にどうぞなんて書かれていたら、注文せずにいられます???

何をやっているかは不明ですが、とにかく楽しそうだ。

この日の宿泊者は我々ともう1組だけだったので、深夜まで大パーティーとなりました。
O川さんが奥穂で彼女に振られた時の話が、いい酒の肴です。
通常、小屋の朝食は6時からなのですが、ご主人からまさかの鶴の一声が。

「もう、明日の朝食は7時!!!」

その後O川さんはN&Tの二人に風呂に連行されてました。

N&T「O川あぁ~~!!!回せぇ~~~!!!」

どうやらお風呂でぐるぐる回ってたらしいです。
バカですね。

宴会がお開きとなった後も、部屋でプロレスごっこと枕投げです。
バカですね。
もちろん私も一緒になって取っ組み合いでした。

最終日 湯俣~七倉

ご飯泥棒オールスターズの朝食を存分に頂いたら、名残惜しいですが下山です。
一体何日間を山で過ごしたら、家に帰りたくなるのでしょうか。

帰り道はカエルがやたらいたので遊びながら帰り、くんくん亭でランチをして、今年の夏休みは終わりました。

ひっくりカエル