冬の上高地へのアクセス
上高地。
それは言わずと知れた、一大観光地であると同時に、北アルプスへの入り口でもあります。
冬期は、徒歩でのアクセスのみ可能です。
年末年始は足湯がある駐車場からタクシーが出ていますが、予約はした方がいいでしょう。
冬期は無料。車中泊もOKのようです。
今回我々が採用したアクセスは、坂巻温泉に駐車して徒歩で向かうというもの。
1日1,000円で利用可能です(入出庫時間に制限あり、詳細は坂巻温泉のHPをご確認ください)。
松本方面から来るとトンネルを出てすぐの、見えない場所にあるので、初見殺しです。

平日にもかかわらず、駐車場は満車に近い!
好天の週末は、停められないかもしれません。
支度をするNおじさんとT青年

駐車場~上高地への歩き
国道158号を歩いて釜トンネルへ。
こんな山の中ですから、まさか歩行者がいるとは思わないドライバーもいると思います。
はねられないよう、気を付けて歩きましょう。

釜トンネルの入り口までは、徒歩30分前後。
今回、トンネル内の照明は点灯していましたが、基本まっくらなのでヘッデンは必須です。

3人ともヘッデンはこれ。軽さは正義。
ゆるやかな登りが続きますが、荷物が重くて辛かった・・・。
冬山では雪から水を作りますが、上高地程度の標高だときれいな雪がないかもと思い、水を2.5リットル持参したため、いつもより荷物が重かったのです。
やはり軽量化は大切であると同時に、体力も大切だし、年には勝てないと自覚するのも大切かな、と痛感した次第でした。
釜トンネルの入り口より約1時間で、大正池に到着です。
久々に見たな、この景色!と、テンション上がる我々。

さらに40分歩くと、上高地のバスターミナルに到着です。
夏は観光客、ハイカー、登山客、クライマーが入り乱れてにぎわうこの場所も、穏やかな静けさに包まれています。

河童橋手前のトイレは閉鎖中。
冬の上高地はあまり雪が多かったイメージがありませんが、結構埋まっています。
このトイレは閉鎖中ですが、バスターミナル付近や小梨など、数か所の冬期トイレが利用可能です。
ありがたや。

冬の河童橋。
天気がいい!!!
そして結構人がいて、なんだ?最近はやってんのか?と驚きを隠せません。
以前、冬に来た時は、人に出会うことなんてほぼなかったのですが。

雪の河童橋~小梨平~雪洞建設
野営のために小梨に向かいますが、思いのほか積雪が深く、Nおじさんは雪に埋もれてウワァァと。
それを冷静に見つめるT青年。

小梨平にはお猿さんがワラワラいました。
ケツがかゆいらしい。

猿はさておき、土木工事に着手します。
今夜のお宿の工法と位置決めにかかりますが、協議の結果、本日のお宿は「スノーマウント」とします。
平たく言えば、かまくらです。
まずは大きさを決める

雪中の作業用スコップは、雪をすくう面積の広いものがおすすめ。
そしてスノーソーは安定のモチヅキ!

刃渡り34cmと十分な長さを備えつつも、ザックにおさまる全長。
専用ケース込みでの重量もわずか190gと、持ちたくもない社用携帯より10gも軽い!
社用携帯を持って行ってもクソの役にも立ちませんが、モチヅキスノーソーなら、カッチカチの雪でも他スノーソーの2倍は仕事になります(国際山岳ガイド談)。
雪の中での作業は、防寒テムレスが安くてよき。
と思ったら、T青年はまさかの素手。

防寒テムレスは、森林限界を越えない場所や、天候の穏やかな日であれば、雪山登山にも使えます。
なんせ冬山用のグローブはお高いので、まずはこのぐらいの装備&行ける場所から試してみるとよいでしょう。
さて今回はスノーマウントを作りますので、まずは雪を盛っていきます。
積んでも積んでもサラサラと崩れる雪山に、「本当に今夜のお宿は完成するのか?」という不安にかられますが、雪も積もれば山となりけり。

汗だくになって積んだ山の内部をくりぬいて、居住スペースを作り出します。
ひとりが中を掘って、ふたりでかき出された雪を捨てますが、なかなかの重労働でゼーハーいいながらの作業です。
しかしT青年は涼しい顔で作業を続けており、やっぱり若いと体力が違うなぁと感心しておりましたところ、翌日ちゃんとカラダが痛かったようです。
それなのに、表情に全く出ていない。
そういうところ、あるんですよ。
ようやく完成、作業時間は2時間程度

玄関からの景色もよい感じです。

雪洞での宴会が楽しすぎることを、君は知っているか?
歩きと土木工事で疲労した肉体に、すき焼きでタンパク質を補給。
くぅー!うますぎだろ!!!

すき焼きははゼイタク感があると同時に肉と野菜も摂取でき、調理も簡単という、奇跡のメニューです。
割り下が若干重いですが、なめられちゃいけねぇんで、普通にスーパーで売られているものを持参すればよろしいかと。
今回卵は、3人で6個ということで、6個入りパックをそのまま持参しました。
短距離かつ高低差が少ないため、ザックに外付けにして大切にお運びしましたが、登山で卵を担ぎ上げたい場合は、専用のケースが良いと思います。
ウイスキーを飲むために、おもむろに雪洞の壁をカップに入れるT青年。
雪洞泊は、水を作るにもウィスキーを飲むにも、手軽に材料を調達できるのが魅力です。
あと、酔っぱらってこぼしても、テント内と違って雪の上なら悲しくない。

本日のウイスキーは、マルスウイスキーの「信州」。
長野県ではたいていどこでも売られていて、お手頃なのに美味しく、ツルヤの19円もやし並みにコスパよし!

Nおじさんはお疲れの模様で、ちょっとだけ寝るとのこと。
ズゴック

雪の季節は、動物の足跡を観察する「アニマルトラッキング」も楽しいもの。
この足跡は、どうやらニホンナカノメのもののようです。

ひとしきり飲んで食べて、夕焼けを見ようと雪洞の外へ。
燃えるような夕焼けとまではいかずとも、それなりに美しい。

長いものには巻かれろ。

さあ、まだまだ飲むぞ。
スリーピングマットは全員同じものを使っています。
別におすすめしあったわけではないのですが、結局冬山での野営のような厳しい環境で使うものは、行きつくところ同じなのかもしれません。
ソファのように、座面と背面に使用

キャンドルでも十分に明るくなるのが、雪洞の良い所。

ロマンチックなキャンドルの灯かりのもと、くだらない話に花が咲き、思い出は全て上高地の雪の中に消え去ります。
できるだけ持ち帰ろうとメモしても、後から見返しても意味不明で結局持ち帰れない。
ジュゴンが呪言とか、どうしてそうなったのかが思い出せません。
朝は定番、起きたら負け大会
いつもの「起きたら負け」から始まる今日という日は、キムチ入りの豚汁でスタートです。

雪洞内は湯気でもっくもくに。
あたたかい朝食をのんびりと食べられる幸せよ。

外は、昨日の晴天とは打って変わって、降雪中です。
昨日のうちに周辺を散策しておいたら良かったかも、と思わぬでもありませんが、宴会しにきただけですし、まあいいでしょう。
樹上に猿がいますよ。画面中央で、木の実みたいに見えてます。

雪にかすむ冬の大正池が、幻想的でした。

道中やたら猿がいて、ヒーとかホーとか言っていましたが、同行の人間もヒーとかホーとか言い、私には区別がつきませんでした。
しかし猿には区別がつくらしく、まったくの知らん顔。
そうこうするうちに、釜トンネルが終了です。
帰りはおおむね下りの勾配、かつ、荷物から酒が減った分軽くなり、あっという間です。

雪洞泊のススメ
雪の中での野営、やってみたくないですか?
経験者に連れて行ってもらえば、手軽に楽しめますよ!
北アルプスでは、場所によっては4月下旬まで十分に雪洞泊やイグルー泊を楽しむことが可能です。
冬山テント泊とは違う面白さがありますので、人生の思い出の1ページに加えてみてはいかがでしょうか。