白木峰 2時間ちょっとでワタスゲの天国へ

白木峰?どこそれ?

標高1596m、富山県と岐阜県の県境に位置します。
八合目まで車で行くことができ、そこからピークを経由して、ワタスゲがモフほこる「浮島の池」まで往復してもわずか2時間10分という、癒しのハイキングコースです。
今回、足をポッキリやってしまった仲間のリハビリ山行として、この癒しのコースに白羽の矢が立ったわけです。
初めて耳にした時は「どこそれ?」と思い、あまり眺望もない里山歩きになるだろうと、さほど期待はしていませんでした。
しかし後に、土下座する勢いで「バカにしてすみませんでした!!!」となります。

八尾町とは

白木峰の富山県側の登山口は、八尾にあります。
平成17年、市町村合併によって八尾町(やつおまち)は富山市の一部になりました。
それまでは、婦負郡(ねいぐん)八尾町であり、私の愛するばあちゃんの出身地でした。
八尾町は、およそ300年前から受け継がれている行事の「おわら風の盆」で有名で、9月1日~3日の間、夜通し(現在は時間制限があるらしい)物悲しい胡弓の音色とともに、おわらが踊られます。
詳しいことを語りだすとキリがないので、詳細や踊りと旋律はYoutubeやウィキペディアなどで見ていただければと思いますが、あの旋律を聴くと、胸の奥をキュッとつかまれるような、なんとも切なくてノスタルジックな気持ちになります。
ミトコンドリアは母系遺伝ですから、八尾の血が私にも流れているのかもしれません。

駐車場情報 
チート駐車場もあります

白木峰は、杉ヶ平キャンプ場に車を停めてピークを目指すのが無難でしょう。
駐車場は無料で、ちょっと坂を登ればキャンプ場のトイレも利用できます。
キャンプ場のトイレも十分きれいなのですが、その向かいあたりにある森林学習展示館のトイレはウォシュレット付きです。
入場は無料ですが、木曜定休で冬季閉鎖なので、このトイレをアテにするのであれば、事前にチェックしましょう。

【杉ヶ平ふもとの駐車場】

ここから狭い林道を運転してショートカットすれば、ピークを踏みつつ「浮島の池」というこの世の天国まで歩いてわずか2時間ちょっとという、チート駐車場まで行けます。
ただ、注意点がございます。

1.気象条件や積雪等により、林道通行止めになる可能性あり。
2.道幅が非常に狭く、「お前は下がれ、俺は下がらん」がある可能性あり。
3.チート駐車場は競争率高し。
4.Googleマップ上では、ふもとの駐車場もチート駐車場も「白木峰駐車場」になっている。

チートにトライする場合は時間帯に注意しないと、対向車に苦労するでしょう。
また、対向車とのすれ違いが少ない時間帯の場合であっても、見通しが大変悪い上に道幅が狭いくねくね道を30分近く運転することになるので、かなり疲れます。

【チート版白木峰駐車場】

チート登山口の駐車場トイレは、この日(2024/06/19)は使えませんでした。
駐車可能台数は20台程度でしょうか、土日は絶望的に停められないと思います。
この日は午後から駐車場の偵察で見に来たのですが、平日でも駐車場は満車で、林道の脇にまでびっしりと車が停まっていました。
土日は阿鼻叫喚の地獄絵図でしょう。

【白木峰駐車場の様子】

杉ヶ平キャンプ場の本気は侮れない

偵察を終え、今夜のお宿である杉ヶ平キャンプ場へ戻ります。
場所は限られているものの、直火可能なサイトもありますし、ひな壇形式に整備されていてとてもいいキャンプ場でした。
使用料と持ち込みテント料で、ひとり880円!
なのにトイレは水洗ですし、空き缶や空き瓶も捨てられます。
自販機はなく、受付が開いている時間はビール程度は買えますが、人が不在の時間帯が多いです。というか、ほぼいません。
平日は予約も不要そうですが、薪を買いたい場合は予約時に伝えておけば、受付の外に置いておいてくれそうです。

【幕営場所からの景色】

キャンプ場の一画には、ちょっとした渓流風スペースもあります。
沢に餓え渇いている我々は、ここに陣取りました。
結果、ブヨの餌食として、尊い犠牲者を出しました。

フリーサイトで、ひな壇になっているため眺めもよく、木洩れ日でくつろげば通る風も涼しい、なんとも気持ちの良いキャンプ場、しかも880円。
八尾は侮れない・・・。
あと、ヤギがつながれていました。
人なれしているようで、近寄ると犬みたいに寝転がって腹を見せて、かゆいんだから掻いてくれとでも言わんばかりに、アスファルトに背中をゴリゴリ擦り付けていました。

天国の白木峰へ

早朝に出発したため、首尾よく8合目登山口に車を停められましたが、平日にもかかわらずすでに6割程度は埋まっています。
おそろしや・・・。

晴天の下、ぼちぼちと歩き始めます。
途中、林道を横切ってもよし、林道を歩いてもよしですが、序盤は意外に勾配がきついです。

ちょいちょいっと歩くと、間もなく見晴らしの良い場所に出ます。
おぉー!いいじゃん!いいじゃん!となります。

向こうに見えるのは避難小屋。
とても立派で、営業小屋に見えます。
緑の連なりの間にひっそりたたずむ青い屋根が美しい。

時に勾配がきつい場所もあり、ロープが設置されています。

ニッコウキスゲが群生することで有名らしく、ちらほらと咲いていました。
つぼみの数からして、最盛期はすごいことになりそうです。

愛らしいピンクの花も咲いています。
花が好きな人に人気の山らしいですが、なるほど納得です。

低山かと思ったのに、こんな景色。
予想外でした。

そして浮島の池に来たら、これですよ。

こんなに見事なワタスゲの群生地は、初めてです。
あれ?ここは天国かな?

同時刻に7~8名くらいがこの場所にいたでしょうか。
皆、うっきうきで写真を撮ってます。

浮島の池とはよく言ったもの。

ふわっふわのワタスゲが夢のよう。
これが八尾の本気か、侮れん。

ひときわキャッキャしているソロの女性がいましたが、私がたまたま持っていたマシュマロを差し上げたところ、
「すごーい!!くぁwせdrftgyふじこ!」
と言って、マシュマロと一緒にワタスゲを撮影していました。
そういう、ふとしたふれあいって、素敵です。

水があればトンボは卵を生みたいのでしょう。
下界ではあまり見かけないトンボが、わんさか飛んでいました。

どうです、この景色?
あれ?ここは太郎平かな?
その辺の里山だと思ってて、大変申し訳ございませんでした!!!

遠くから見えていた、青い屋根の避難小屋です。

内部はこんな感じ。
室内で火を熾していいのだろうか???
ちなみにトイレは使えない状態でした。

避難小屋の脇には、こんな可憐な花が咲いています。
いちいち、花がきれいな山でした。

近くに用があったため、付近でリハビリによい山はないかと、足ポッキリの仲間がたまたま探した白木峰。
それが八尾から登れるとは、なんともご縁を感じます。
運転中も懐かしい場所を通ったり、買い出しのために「近くのスーパー」を検索したら、よくばあちゃんが行っていた「フレック」が出てきたり、個人的に感傷的になる山行でした。
びっくりするほどおいしかった、ばあちゃんが握った新米の塩むすびとか、本当にいろいろなことが思い出されて、目頭が熱くなります。
この八尾の千の風になって「よく来たね」と、言ってくれているような気がして仕方がありません。
ロープもハーネスも必要ない、短時間で登れる、そんな天国が八尾にありました。

素敵な場所は本当にたくさんあって、それらを訪れるには人生って短いなと常々思います。
しかしそんな限られた人生の中で、八尾の美しい場所を訪れることができたのは、やはりばあちゃんが呼んでくれたのかもと思うと、嬉しくもあり、切なくもある、涙のしょっぱさが塩むすびを思い出させる夏の日でした。